やまんば、普通やられるか?
やまんば」の物語
「やまんば」の物語で最も正統的(オーソドックス)なものは、旅人を食らおうとする恐ろしい老女として描かれるパターンです。多くの地域で共通して見られる、この典型的なあらすじをご紹介します。
あらすじ:旅人を〇らうやまんば
旅人が山奥深くで道に迷い、日も暮れて途方に暮れていると、ぽつんと明かりの灯る一軒家を見つけます。藁にもすがる思いでその家を訪ねると、中から白髪の優しい老女が出てきて、旅人を快く家へと招き入れます。老女は疲れた旅人に温かい食事を振る舞い、「今夜はゆっくりお休みください」と床を勧めるのでした。
旅人は安心して深い眠りにつこうとしますが、夜中にふと目を覚まします。すると、隣の部屋から奇妙な物音が聞こえてきます。気になってそっと様子を窺うと、さっきまでの優しい老女の顔が恐ろしい形相に変わり、〇肉を食べるような物音を立てているのでした。旅人は、この老女こそが、山に住むという恐ろしいやまんばであると悟り、心臓が凍りつくような恐怖に襲われます。
やまんばは、次の獲物である旅人の様子をうかがいに、旅人の寝ている部屋に近づいてきます。旅人は死んだふりをしたり、あるいは機転を利かせて「少し便所へ」などと言って外に出る隙を狙います。外に出た旅人は、一目散に山を駆け下りて逃げ出します。
やまんばは旅人が逃げたことに気づくと、恐ろしい形相で追いかけてきます。やまんばの足は非常に速く、あっという間に旅人に追いつきそうになります。旅人は必死に逃げながら、知恵を絞って様々な方法でやまんばの追跡をかわそうとします。
- 櫛(くし)を投げると、それがたちまち竹やぶになる
- 針を投げると、それが鋭い針山になる
- 豆を投げると、それが粘りつく泥沼になる
こうした障害物で時間を稼ぎながら、旅人は必死で人里を目指します。 ついに夜が明け、鶏の鳴き声が聞こえる頃、やまんばは夜の間にしか力を発揮できないためか、それ以上追ってくることを諦めて山の中へと消えていきます。
旅人は何とか無事に人里にたどり着き、九死に一生を得たのでした。
負けるのはいやだ、やまんばへの反撃方法10選
- 呪文や真言を唱える: 仏教の真言やお経、神道の祝詞(のりと)など、魔除けの力があるとされる言葉を大声で唱えるのは、最も古典的な方法です。特にやまんばが恐れるとされる聖なる言葉は効果的とされます。
- 聖なる道具を投げつける: 仏具の数珠、破魔矢、お守り、あるいは寺社で授かった護符などを投げつける、または掲げることで、その霊力によってやまんばを怯ませたり、退けたりします。
- 特定の植物を利用する: ヒイラギの葉や豆(特に節分で使うような炒り豆)など、邪気を払うとされる植物をまいたり、身につけたりすることで、やまんばの接近を防ぐ効果があるとされます。
- 櫛(くし)や針を投げる: 追ってくるやまんばに向かって櫛や針を投げると、それが巨大な竹藪や針山に変化し、追跡を阻むという話がよくあります。これは、日常的な道具が異界で特別な力を発揮するパターンです。
- 火を用いる: 火はやまんばが苦手とするもののひとつとされます。火を焚いたり、燃えているもの(松明など)を投げつけたりすることで、やまんばを遠ざける効果が期待できます。
- 水のある場所に逃げ込む: 川や湖、池など、水のある場所は異界の存在が越えられない境界とみなされることがあります。水の中に飛び込んだり、水の向こう側へ逃げたりすると、やまんばは追ってこられない場合があります。
- 夜明けを待つ: 多くの妖怪や魔物は、太陽の光や夜明けの鶏の声が苦手とされます。ひたすら逃げ続け、夜が明けるのを待つことで、やまんばが力を失い、退散するのを期待する方法です。
- 知恵比べで勝つ: 正面から戦うのではなく、とんちやなぞなぞ、約束事など、言葉や知恵を使った勝負を挑み、やまんばを欺いたり、約束の縛りで退けたりする方法です。
- 物理的な攻撃: やまんばが完全に妖怪化していない場合や、弱点を持つ場合は、刀や斧などの武器で直接攻撃することも考えられます。ただし、これは非常に危険で、相手の強さを見極める必要があります。
- 第三者の助けを呼ぶ: 神仏、強力な僧侶や修験者、あるいは狩人など、やまんばに対抗できる力を持つ第三者に助けを求めるのも有効な手段です。逃げながら大声で助けを呼んだり、事前に協力を仰いでおいたりすることが考えられます。
やまんば物語へのツッコミ
いやいや、ちょっと待ってくださいよ!いくつか疑問が湧いてきました。
-
「ポツンと明かりの灯る一軒家」 いや、山奥で道に迷ってるときに、見慣れない明かりがポツンと見えたら、普通はもっと警戒しませんか? ホラー映画ならそこで引き返すフラグが立つやつですよ! もしかしたら仙人か、はたまたやまんばか…って、後者だったパターンですね。
-
「優しい老女が快く招き入れ、温かい食事を振る舞う」 これね、もう完全に「おいしいエサ」のやつじゃないですか。山で獲物が獲れなかった日の緊急食料補給みたいな。親切すぎる人には裏があるって、あれほど…! しかも、あんな山奥で、旅人が来ることを想定したかのような完璧なおもてなし。どう考えても怪しいでしょうに。
-
「夜中に奇妙な物音、〇肉を食べるような音」 〇肉を食べる音って、具体的にどんな音なんですかね? ゴリゴリ? ムシャムシャ? それが聞こえても、すぐに逃げ出さずに「そっと様子を窺う」あたり、旅人、なかなか肝が据わってるのか、はたまた危機感が薄いのか…。私ならその時点で窓を突き破って逃げてますよ!
-
「櫛や針が竹藪や針山に、豆が泥沼に」 これ、なんでそんな都合よく変化するんでしょうね? しかも旅人、そんな万能アイテムを旅の必需品として持ち歩いてるんですか? 櫛はまだわかるけど、針とか豆とか、逃走用アイテムとしては渋すぎますね。あと、やまんばが追いかけてる最中に、冷静にポケットから取り出して投げてる姿を想像すると、ちょっとシュールです。
-
「鶏の鳴き声で退散」 なぜ、鶏の鳴き声なんですかね? 太陽が昇るのはわかるとして、鶏の鳴き声で魔物が退散するっていうのは、なんか昔話あるあるすぎて、ツッコミたくなります。毎日、鶏が鳴くたびに山に帰っていくやまんばの姿を想像すると、意外と律儀でかわいい気もしてきますね。